公共施設マネジメントの取り組みは、大きく分けて4つのステップに分けることができます。
まず第1ステップは「公共施設の実態把握」の段階、第2ステップは「公共施設マネジメントの方針策定」の段階、第3ステップは「個々の施設の実施計画の策定及び計画の実践」の段階、第4ステップは「評価・改善」の段階です。
現在、公共施設マネジメントの取り組みを始めたという自治体の多くは、まだ第1ステップの実態把握の段階ですが、先駆的に取り組みをしている自治体では、第2ステップのマネジメントの基本的な方針や施設再編の計画など、自治体としてどう公共施設を取り扱っていくのかといった考え方を公表するところまで進んでいるところです。さらに、これから具体個別の施設について、整備の方法やスケジュールなどを詰めていくという第3~4ステップまで進めている自治体は、まだわずかの状況です。各ステップの内容は、次の通りです。
■第1ステップ
本書の第2部でまとめたように、高度成長期の人口増加に伴って大量建設した公共施設の更新需要がひっ迫することが見込まれる中、公共施設マネジメントへの取り組みは、自治体にとって喫緊の課題であるものと考えられます。しかし一方で、まだこの第1ステップまでも進めていない自治体も多い状況です。
公共施設等更新費用試算ソフトは、この第1ステップに進む際、簡単に、公共施設の実態について把握(保有量の把握、更新費用の試算、他自治体等との比較による自己診断)できるよう開発したものであり、人口あたりの施設量が他市町村と比べてどの程度多い・少ないか、更新のピーク時期がいつ頃になりそうかなどを把握することができます。さらに、詳細を調査しながら、白書等により現状と課題を見える化するというのが第1ステップです。
■第2ステップ
第2ステップでは、公共施設マネジメントを進める上での基本的な方針を固めるとともに、施設種別ごと及び個別施設の方向性を整理し、施設再編を図ります。
マネジメントの基本方針の策定にあたっては、原則及び数値目標の設定、住民や議会等との協議の場を設け、総論を浸透させることが重要となります。そこで策定した方針に基づきながら、実行可能な予算とスケジュールを見据えて、施設種別ごと及び各個別施設の方向性について整理していくというのが、第2ステップです。
方向性を検討する際には、各施設の保全情報や事業評価等を踏まえ、施設の性能面及びサービス面評価から施設種別ごと及び各個別施設の方向性についての仮説を立て、それを他の施設との兼ね合いや複数部門間での協議、住民・議会との協議を図りながら、何度も検証・再検討を繰り返し、方向性を確定させるといった、非常に重要であり、かつ難しいステップです。
■第3ステップ
第3ステップでは、第2ステップでまとめた個別施設の方向性に基いて、施設再編を実行するための個別施設の実施計画をまとめ、それを実践していく段階です。ここでは、特に住民・議会との意識共有を図りながら進めることが非常に重要となります。また、再編を確実に実行していくためにも、進行管理を適切に行っていく必要があります。
■第4ステップ
第4ステップは、実践による効果を検証・評価し、それを踏まえて施設及びサービスの具体的な改善・改革を図っていく段階です。公共施設マネジメントという観点では、実践による効果の検証、マネジメント方針で設定した目標等に対する達成度等の評価・検証を行っている自治体は、先駆的な事例でもまだ見らませんが、今後は、効果を検証しながら、それを改善・改革につなげていくことで、公共施設の“マネジメント”を行っていくことが必要です。
図表 公共施設マネジメントの取り組みの流れ